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らくらく照射録

らくらく照射録

noteの記事「診療放射線技師がPythonを選ぶべき4つの理由」の中で、私が開発した業務改善アプリとして「らくらく照射録」を紹介しました。ここでは、このアプリの詳しい内容と、現在開発中のDICOM対応版についてお伝えします。

「Pythonで実際にどんなアプリが作れるのか」を、現場の課題から解決策まで具体的にお見せします。

照射録業務の現実:あなたの施設でもこんな状況ではないですか?

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです:

  • 紙ベースの照射録管理が抱える問題
  • 5年間の保管義務という重い負担
  • 現状、手頃な選択肢がない

一般撮影の照射録管理。
多くの施設で、いまだに紙ベースまたは手作業での運用が続いています。
患者1人に対して1枚の指示書に必要情報を記入し、ファイリングして保管する。
検査件数の多い整形外科クリニックでは、1日に50枚、100枚と膨大な量になります。都市部のクリニックではさらに多くなることもあるでしょう。月間で数千枚規模の指示書を管理している施設も珍しくありません。

紙ベースの照射録管理が抱える問題

多くの施設では、撮影時に渡される指示書(患者名、ID、撮影部位などが記載されたもの)に、撮影条件を手書きで追記する運用が一般的です。
1枚あたり10秒程度で終わる作業なので、1件だけなら大した手間ではありません。

しかし、これが1日50件、100件と積み重なると話は変わります。
検査件数の多い施設では、この「たった10秒」の作業が毎日繰り返されます。さらに、手書きである以上、記入ミスや記入漏れのリスクもゼロにはできません。

現場の技師にとっては、このチリツモの面倒さを何とかしたい。

一方、経営者やクリニックの管理者にとっては、もう一つ別の切実な問題があります。保管の問題です。

5年間の保管義務という重い負担

照射録には5年間の保管義務があります。
月間数千枚のペースで増え続ける紙の書類を、5年分保管し続けなければなりません。クリニックの限られたスペースの中で、この保管場所の確保は深刻な問題です。棚を増設し、ファイルボックスを積み上げ、それでも足りなくなる。

照射録の記載は、診療放射線技師法で定められた義務です。X線撮影を行った際には、所定の事項を記録しなければなりません。そして、その記録は監査で基本的にチェックされます。

一方で、日常業務の中で過去の照射録を検索して参照することはほぼありません。法律で定められた義務を果たし、監査に備えて保管する。そのために、毎日の記入作業と5年分の保管スペースが必要になっている。この状況をどうにかしたいと考えている技師や経営者は少なくないはずです。

現状、手頃な選択肢がない

多くの技師や経営者は、この状況に満足しているわけではありません。
「どうにかしたい」と思いながらも、現実的な選択肢がほとんどないというのが実情です。

照射録を管理する方法は、大きく分けて3つあります。

① RIS(放射線科情報システム)で管理する方法。 RISには照射線量の記録や帳票出力などの機能が備わっており、照射録管理にも対応できます。
しかし、導入費用はクリニック規模でも数百万円程度、大規模病院では1,000万円を超えることも珍しくありません。
小規模クリニックでは、照射録のためだけに導入するのは難しいのが実情です。

② 電子カルテで管理する方法。 大規模病院向けの電子カルテにはオーダリングシステムと連携した照射録管理の仕組みがありますが、初期費用は数千万円規模。
一方、クリニック向けの一般的な電子カルテには、照射録管理機能が標準搭載されているものはほぼありません。

③ 紙やExcelで手作業管理。 結果として、整形外科クリニックなどの小規模施設では、紙の照射録やExcelで管理しているところが多いのが現状です。Excelで独自のフォーマットを作って工夫している施設もありますが、結局のところデータの入力は人の手で行う必要があり、手間がゼロになるわけではありません。

つまり、小規模施設にとっての選択肢は「大がかりなシステムか、手作業か」になりがちです。照射録管理に絞った、手頃な価格の仕組みはほとんど見当たりません。

装置から出力されたデータを自動で取り込み、必要な情報を付与して、そのまま保存できる。
手入力を最小限にしつつ、監査にも対応できるフォーマットで出力される。そんな仕組みが、高額なシステムを導入しなくても手に入る。
「らくらく照射録」は、まさにこの隙間を埋めるために作ったアプリです。

私自身、16年の臨床経験の中でこの課題を知っていました。そして、クリニックで働く診療放射線技師さんから実際に「こういうアプリを作ってほしい」と依頼を受けたことが、開発のきっかけとなりました。

「らくらく照射録」とは何か:アプリの全貌

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです:

  • アプリの基本コンセプト:シンプルで確実な業務効率化
  • 現行版(CSV対応)の機能と特徴
  • DICOM対応版:メタ情報を直接取り込む新機能

アプリの基本コンセプト:シンプルで確実な業務効率化

「らくらく照射録」は、PythonのWebフレームワーク「Django」を使って開発した、一般撮影検査の照射録管理を効率化するアプリケーションです。
コンセプトは非常にシンプルです。

画像サーバーから出力されたデータを読み込み、必要な情報を付与して、ExcelまたはPDFで出力する。

検査が終わったら、装置からデータを取り出し、アプリに読み込ませ、ExcelやPDFに保存する。
監査が来た時にはそのファイルを見せるだけ。
紙の山は不要になり、5年分のデータもPC内にコンパクトに収まります。

技術的なポイントとして、このアプリはスタンドアローンPC上で動作します。
ネットワーク接続は不要で、患者情報が外部に出ることはありません。データベースも使用せず、設定ファイルで管理しているため、導入も運用も非常にシンプルです。
操作はシンプルなので、一度やり方を覚えれば、次からは迷うことなく使い続けられます。

現行版(CSV対応)の機能と特徴

現行版は、画像サーバーから出力されるCSVファイルを取り込む方式です。

最初に行うのは初期設定だけ: 設定画面で、施設名、依頼医名、技師名、対応する撮影方向(View)とその撮影条件を登録しておきます。この設定は最初に一度行えば、あとは変更がない限りそのまま使い続けられます。

日々の操作はシンプル:

  1. 画像サーバーからCSVファイルを出力
  2. 「らくらく照射録」にCSVファイルを読み込ませる

3.アプリがCSVデータに含まれる撮影部位・年齢・性別を自動で判定し、あらかじめ設定した撮影条件を照合して出力

CSV読み込み
Excel出力

※画像のID、名前は架空です。

CSVを読み込ませるだけで、部位や患者情報に応じた撮影条件が自動的に紐づけられます。
従来は1枚ずつ手書きしていた記録が、アプリなら数分で完了します。

しかも、まとめて処理できるのが大きな強みです。
その日の検査が終わった後にまとめて出力してもいいし、忙しければ金曜日に1週間分をまとめて処理することもできます。
200件の検査データでも、読み込みから出力まで数秒で完了します(PCのスペックにもよりますが)。
検査件数が多い施設ほど、効果を実感できるはずです。

ただし、CSV対応版には制約もあります。
まず、画像サーバーがCSV出力に対応しているメーカーでなければ使えません。現時点では、CSV対応版は一部メーカーの画像サーバーのみに対応しています。お使いの画像サーバーが対応可能かどうかは、お問い合わせください。
また、対応している場合でも、CSV出力機能がオプション扱いで追加費用が発生するケースもあります。さらに、CSVで出力される情報は限られており、検査の詳細(左右の区別や施設固有の検査名など)が含まれないことがあります。

この制約を解消するために開発したのが、次に紹介するDICOM対応版です。

出力形式の柔軟性: 出力はExcelとPDFの両方に対応しています。監査時の提出資料としてそのまま使えるフォーマットで出力されるため、監査前に慌てて資料を整える必要もありません。

導入のしやすさ: 設定ファイル(setting.json)で施設ごとの設定を管理しています。撮影装置の種類や出力項目が施設によって異なっても、設定ファイルを調整するだけで対応可能です。大規模なシステム導入のような手間やコストは一切かかりません。

DICOM対応版:メタ情報を直接取り込む新機能

現在、「らくらく照射録」はさらに進化しています。DICOM対応版の開発がほぼ完了しており、近日リリース予定です。

DICOM対応版では、画像サーバーに保存されているDICOM画像ファイルを直接アプリにアップロードできます。
アプリはDICOMファイルからメタ情報(患者ID、撮影日時、撮影条件、線量情報など)のみを自動抽出し、画像データ自体はアプリ内に保存しません。

DICOM対応版のメリット:

CSV出力に対応していない画像サーバーでも使える。 DICOM画像はほぼすべての撮影装置が出力する標準フォーマットです。画像サーバーのCSV出力の有無やメーカーの対応状況に左右されず、追加のオプション費用も発生しません。

DICOMヘッダーに含まれる豊富な情報を活用できる。 CSVでは出力されなかった検査の詳細情報(左右の区別、施設固有の検査名など)も、DICOMヘッダーには記録されています。
さらに、撮影装置との連携ができれば、あらかじめ設定した施設固有の撮影条件ではなく、実際に使用された撮影条件をそのまま照射録に記載することが可能になります。より正確で詳細な照射録を自動で作成できます。

メタ情報の自動抽出で入力の手間がさらに減る。 DICOMヘッダーには、患者情報や撮影条件が標準フォーマットで記録されています。これを自動的に読み取ることで、手入力の項目がさらに減り、ミスのリスクも低減されます。

画像データは扱わないのでセキュリティ面も安心。 抽出するのはメタ情報のみで、画像データそのものはアプリ内に保存されません。患者の撮影画像が外部に漏れるリスクを最小限に抑えた設計です。

CSV対応版とDICOM対応版は、施設の運用に合わせてお選びいただけます。

現場を知る技師が作ったアプリ

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです:

  • クリニックの技師からの依頼で生まれたアプリ
  • 内情を理解したうえで作る
  • 「導入して終わり」のメンテナンスフリー設計

クリニックの技師からの依頼で生まれたアプリ

「らくらく照射録」は、私が一人で思いついて作ったアプリではありません。

現場で日々の記録作業と保管に苦労している技師の声を直接聞き、「何が本当に必要なのか」を理解した上で開発に取り組みました。

内情を理解したうえで作る

私自身、16年の臨床経験を持つ診療放射線技師です。照射録がどういう目的で存在し、どのように運用され、監査でどう扱われるのか。この内情を理解していることが、現場で使えるアプリをつくる前提だと考えています。

照射録のアプリをつくるには、「照射録とは何か」から始まり、監査での使われ方、施設ごとの装置の違い、出力フォーマットの要件まで、押さえておくべきことがたくさんあります。
自分が技師としてその実務を知っていたので、開発の最初から次のような判断ができました。
「照射録として、この情報さえ入っていれば十分」
「この項目は施設によって違うから設定で変えられるようにしておこう」
「紙・電子保存どちらにも対応できるようにしよう」

実際の開発では、依頼をいただいた技師の方と何度もやり取りを重ねながら、一つずつ作り上げていきました。
「ここはこうしてほしい」
「この項目も必要」
といった現場の声を直接聞きながら改善を重ねる。開発者と利用者の双方が照射録の実務を理解しているからこそ、やり取りがスムーズに進み、現場で使えるアプリに仕上がったと思っています。

「導入して終わり」のメンテナンスフリー設計

このアプリを設計する上で最も重視したのが、導入後に手間がかからないことです。

スタンドアローンで動作するため、サーバーの管理は不要。データベースを使わないため、バックアップの手間もありません。ネットワーク接続も不要なので、セキュリティの心配も最小限です。

設定の変更が必要な場合も、設定ファイルを編集するだけで対応できます。ITの専門知識がなくても、自分たちで管理できる設計です。

一度導入すれば、あとは日々の業務の中で使い続けるだけです。

Pythonだからこそ実現できたこと

その記事で「診療放射線技師がPythonを選ぶべき4つの理由」を詳しく解説しましたが、「らくらく照射録」はまさにその理由を体現するアプリです。

WebフレームワークのDjangoをベースに、CSVやExcelの操作、DICOMファイルのメタ情報抽出、PDF出力といった機能を、Pythonの豊富なライブラリによって実現しています。
特にDICOM対応版では、その記事で紹介した「pydicom」が活躍しています。「Pythonなら医療画像のメタ情報を簡単に扱える」と記事で書きましたが、それを実際の製品に組み込んで、実用レベルまで仕上げたのがこのアプリです。

臨床経験の中で感じた「こういうアプリがあれば現場が楽になる」という思いが出発点でした。Pythonという適切なツールを選び、AIを活用しながら、少しずつ形にしていった結果が「らくらく照射録」です。

導入をご検討の方へ

「らくらく照射録」は、以下のような施設に最適です。

  • 一般撮影の照射録管理を紙ベースまたは手作業で行っている施設
  • 高額な線量管理システムの導入が難しい中小規模のクリニック
  • 照射録の記録作業にかかる時間を削減したい施設
  • 5年分の紙の保管スペースに困っている施設

製品ラインナップ:

製品ラインナップ

価格: 15万円〜(施設の規模や要件に応じてお見積り)

施設ごとの装置構成や運用フローは異なりますので、まずはお気軽にご相談ください。

お問い合わせ方法:お問い合わせフォームからご連絡ください。

まとめ

  • 照射録の記載は技師法で定められた義務。 しかし、日常業務で過去の記録を参照することはほぼなく、毎日の手書き作業と5年分の紙の保管に追われているのが多くの施設の現状です。
  • 「らくらく照射録」は、この非効率をシンプルに解決します。 装置からデータを取り出し、アプリに読み込ませ、Excel/PDFで保存。業務終了後の数分で記録が完了し、5年分のデータもPC内にコンパクトに収まります。
  • DICOM対応版では、DICOMファイルからメタ情報を直接抽出。 CSV出力の運用がない施設でも導入でき、さらなる効率化を実現します。
  • 現場を知る放射線技師が、現場の技師からの依頼で開発。 内情を理解したうえで、現場の運用に合わせてつくったアプリです。
  • スタンドアローン動作、DB不要、ネットワーク不要。 導入後のメンテナンスも不要で、一度導入すれば使い続けるだけです。

「らくらく照射録」の開発の裏側を、技術的な視点から解説することも考えています。ご要望やご質問は、お問い合わせからお気軽にどうぞ。

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